第6回 REPORT

2014.05.10 REPORT

山・まち・人の新しい関係
“豊かな山の暮らしがもたらす,未来の可能性について”

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ミラクルセブン × 京都北山丸太生産協同組合

「山が,まちにやってくる。」をコンセプトに,北山杉の森を京都の街中に出現させる山祭「ミラクル・ヤマクル」を開催しようと目論むミラクルセブンと,伝統ある北山丸太の生産を生業とし,その文化を守り伝える京都北山生産協同組合(以下,組合)。第6回目となるCLASS ROOM では,現在の北山林業が抱える課題と「ミラクル・ヤマクル」にかける想いについて伺い,会場の参加者と一緒に課題解決の方法について意見を交わしました。

□ライフスタイルの変化で需要が低迷する北山丸太

北山杉を加工して作り出される北山丸太は,つるりとした木肌の美しさが特徴。主に角材や板として使用される一般的な杉とは異なり,床の間や数寄屋(すきや)の飾り柱に用いられる高級木材として,およそ600 年の歴史を持っています。しかし近年では,その北山林業が存続の危機に瀕しているのだそう。「床の間のある家が減ったので,そえに伴って北山丸太の需要もなくなってきました。少しでも若い人たちに知ってもらうために,イベントを行ったり北山丸太を使った小物を製作したりしています」と語るのは,組合の理事長を務める森下さん。そんな森下さんのもとへ,「この杉を,街中に持っていくことはできないでしょうか?」という突飛な話を持ってきたのが,ミラクルセブンでした。

□「祭をつくる」という一念から発足したミラクルセブン

ミラクルセブンはもともと,北山杉とは関係なく,「祭をつくりたい」という想いのもとに結成されたそうです。
「祭は,色々なひとが無条件にエキサイトして,つながり合うことができるもの。そんな祭を,自分たちの世代からつくり出してみたいという想いが最初にありました」と,メンバーはいいます。問題は,いったい何の祭にするかということ。それを模索しているときに出会ったのが,北山の伝統的な林業でした。組合の方々から現在抱えている課題について聞いているうちに,「自分たちに何かできることがあるのではないか」と考えるようになったそうです。「北山丸太はもちろん美しいのですが,均等の間隔で杉が植えられている山の風景もまた美しい。でも,若い人たちにいくら『見に来てください』と言っても来てはくれません。そこで考えたのが,山をまちに持ってくること。これはきっと祭になると思いました」組合の方々は,その奇抜さに驚きつつも,少しでも北山杉・北山丸太の知名度向上につながればと,アイデアを受けいれてくれました。

□「ジレンマを抱える北山林業

しかし,困ったのはここからでした。
「ミラクル・ヤマクル」では,200 本の北山杉を街中に立てようと計画しています。祭の後にはその杉をプロダクトなどに有効利用したいところですが,組合としてはそれがどうしても受けいれられないのです。「北山丸太は,伐採する時期をはじめ,乾燥や保管の方法など,ひとつひとつの行程にポリシーをもって作っています。祭のために切った杉を『北山丸太』として世に出すことはできません」床柱以外の家具やプロダクトの制作は積極的に行いたいものの,木材そのもののクオリティを落とすわけにはいかない。それが,北山丸太の難しさであり,組合の方自身も頭を抱えているところなのです。それでは,「北山杉」「北山丸太」という名前を使わずに,祭に使った杉から何かを作ることはできないだろうか。そんな意見がミラクルセブンのメンバーから出されましたが,なかなか難しいようです。
「伐採されたばかりの木は,原材料です。家具などを作るには,加工する必要がありますが,一般の方にはそれができません。例えば,農家を応援したいと思えば,個人的に野菜を仕入れて自分で料理することができますが,北山杉はそうしたことができないので,どうしても遠い存在になってしまいます」と,木材に詳しい別のメンバーはいいます。また,たとえ加工ができたとしても,杉は家具を作るのに適していないため,どのようなプロダクトを作るのかという問題もあります。こうした「山にはたくさんの木材があるのに,それをどう使って良いのかわからない」という状況を,どのようなクリエイションで打破するか。さまざまな意見がメンバーの間で交わされますが,なかなか結論は出てきません。

□参加者から寄せられた意見

そこで,今回のCLASS ROOM では,約40 名の参加者に「一本の北山杉から,何を作りますか?」という問いが投げかけられました。ミラクルセブンと組合の方だけで考えるのではなく,広く意見を募ってみようという考えです。山祭「ミラクル・ヤマクル」では,北山杉を使って,どんな面白いことをしたり,モノを作ったりできるのか。どうすれば,北山林業の課題を解決することができるのか。多くの人を祭に巻き込み,祭をつくることで山の未来をつくっていくことはできないか。このシンプルな問いかけには,幅広い問題提起が含まれています。突然与えられたテーマにも関わらず,様々な視点からのアイデアが寄せられました。例えば,完成品を売り買いする「モノづくり」ではなく,作る過程を楽しむ「コトづくり」という切り口。北山杉を育てて木材にするまでのプロセスをワークショップとして行うという案や,かつて女性たちが伐採された北山杉を背負って山を下っていたという歴史を,祭として再現するという案が出されました。しかし,こうしたアイデアも,ミラクルセブンのアイデアと同様,実行するには様々な課題をクリアしなければなりません。
講演が終わって懇親タイムに移ってからも,会場のディスカッションは続行。これまで北山杉のことを知らなかった参加者まで,ミラクルセブンや組合の方々と熱く語りあっていました。
2014 年秋には,いよいよ第1 回目の「ミラクル・ヤマクル」が開催されます。今回のCLASS ROOM では,山祭に若い人々を巻き込んで行くひとつのきっかけになったのではないでしょうか。

□鹿肉を使ったお料理と懇親会

講演のテーマに合わせて,毎回様々なドリンクを用意しているCLASS ROOM。今回はドリンクだけでなく,林業の天敵・鹿の肉を使ったお料理も登場し,会場を盛り上げました。
鹿肉を提供してくださったのは,北山地区の猟師である大道さん。犬を使い,鹿や猪などの有害鳥獣を穫っているのだそうです。
お料理を担当したのは,京都考食堂・池田さん。「山」をテーマに,鹿肉の他タラの芽などの山菜もふんだんに用い,木の皮や葉を盛りつけに使った美しくおいしい品々を用意してくださいました。

司会:山田 正江
撮影:後藤 純一
レポート:牟田 悠
会場:Tsujimura Hisanobu DESIGN OFFICE + moon balance Inc, moon bld. 3F

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